【思考日記】「物」と「事」の違い、説明できる?
日本語を教えている時、よく「ここには名詞(物)が入ります」みたいな教え方をしてしまう。まあそのように研修を受けているからなんだけど。確か中学の時、英語のthingという単語を勉強した時に「どうして「物」と「事」の二つの意味があるんだろ」って疑問に思ったことがある。「物」と「事」ってすごくペアな感じがするけど、その言語的振舞いは結構違う。この感覚は恐らく、根本的には両者は同じだけど、人間の言語がそのように誘惑しているからだと思う。簡単に考えて、「物」はその場にただ単に存在しているもの。名詞で呼ばれる。それに比べて「事」は命題的であり、表現も長ったらしく、空間的・時間的な説明を必要とするように思える。例えば、「本」は「物」である。でも「本が机の上にある」は「事」である。「本が机の上にある」ということには時制(ある/あった)が含まれているし、本が存在している場所についての言及も含まれている。さらに後者には真偽性の判断も可能なように思える。「物」はすでにその存在が確定しているものである一方、「事」はそれが真であるか偽であるかは定かでない(故に命題的である)。つまり、「物」と「事」は根源的には等価の性質であるが、どの粒度で見るかで区別されているのだと考えられる。